毎月、命日のお参りに行っているTさんというおばあちゃんのお宅は、尾小屋という町にある。すぐ隣にスキー場があるほどの山奥だが、スキー客誘致のため道路は整備されており、信号の多い町中を走るより、かえって早く着いたりする。

元気なおばあちゃんが一人暮らしだが(一人暮らしお宅は多い)、毎月嫁に行った娘さんもおいでになる。
これまたとっても元気な人で、歯に衣を着せぬ言動が面白い。

 この親子だけでも会話のキャッチボールが面白いのだが、この日は年に何度か尾小屋に帰ってくる、東京のおばあさんが加わった。かしましいというか、こうなるとさらに会話に弾みがつく。
この町はインターネットも開通していない山奥なのだが、私も知らない小松のお寺事情や、うわさ話、昔の尾小屋の話などが出てきて、ネットサーフィンより断然面白いレア情報がまんさいである。

玄関に入るなりに、娘さんがマジマジと私の顔を覗き込みながら、
「お坊さん、先日魚屋さんのおばあちゃんの通夜に出とったやろ?」
「ええ」

「やっぱし、通夜と葬儀両方出とったやろ?」
「・・・はい」

「そうか、なんか ○○さん、葬式の時の方がえろう若う見えたわ〜」
「はあ?」
(一同爆笑)

すかさず、東京のおばあさんが
「あんた、それは違う。周りのお坊さんが年寄りばっかりやし、若う見えただけや、あっはははは〜」

間髪入れず、おばあちゃんが
「あんた、それが(坊さんが)来るなり言う事か。失礼な」と言うが
あまり失礼とは思っていない様子で笑っている。

娘さんは、それでも首を傾げながら、穴があくほど私の顔を見ている。
まだ、いつもの私と葬儀であった私とが同一人物か確かめているようである。

以上、玄関から上がって二三歩歩く間に瞬く間にかわされた、会話である。
機関銃で打たれた衝撃ってこんなんだろうか?

玄関でひと笑いあった後、

仏間に通されてみると芍薬(しゃくやく)の花があるではないか。

つづく

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